“りょうし”への道-漁師編③

日没後の船からみる夜景が特別だった。

私にとって、大漁かついろいろな魚種が網にかかるのが最も興奮する時であり、肉体的・精神的な疲れを忘れさせる唯一の瞬間だった。

年末に向かって、魚の活性が下がると、シーズン終了。

漁師の忘年会は牛肉(ステーキ)だった。

年明けの冬の漁は寒さに堪えた。

ただでさえ、寒さに弱い私が何枚着込んだことか。

ある漁が始まると、豊漁を願い、香川県の金刀比羅宮にお参り。

これは意外だったのが、休漁期間が長いこと。

一か月まるまる休みになることもある。

じゃあ、その間は何しているかというと、当然無給なので、他所に働きに行くか、ぷらぷらして遊んでいるか。

漁に出れない、出ていない時は何をするか

浜の清掃、船&網のメンテナンス、組合の行事参加とかいろいろ

休漁期間、休漁日、風が悪い日と出漁している日の方が少ないくらい

それに追い打ちをかけるような往年の不漁

”そりゃ、獲れる時にとるわな”が、率直の感想である。

とれすぎても魚価が値崩れする可能性があるが、獲らない事には始まらない。

海のガードマンをしている方が稼げるかもとジョークが飛ぶ。

世間のニーズと魚種の旬がマッチするタイミングが一番いい。

消費地候補のメインは海外は中国、国内は東京、大阪の順で選別された。

地元が消費地の候補に上がらないのが悲しい。

大漁が期待できる日を選べたら、さぞかしいいだろうか。

自然現象と社会の板挟みで、思っていたほど仕事で漁をすることは自由度がないなあと思った。自分で船を持つとそうでもないのかもしれないが。船上ではどうしても人間関係が濃くなるし、不漁だとなおさらそっちの方向の話題が多くなる。

そんな中でも人間関係で楽しみを見出せたのが、Yさんとの出会いだった。

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