日没後の船からみる夜景が特別だった。
私にとって、大漁かついろいろな魚種が網にかかるのが最も興奮する時であり、肉体的・精神的な疲れを忘れさせる唯一の瞬間だった。
年末に向かって、魚の活性が下がると、シーズン終了。
漁師の忘年会は牛肉(ステーキ)だった。
年明けの冬の漁は寒さに堪えた。
ただでさえ、寒さに弱い私が何枚着込んだことか。
ある漁が始まると、豊漁を願い、香川県の金刀比羅宮にお参り。
これは意外だったのが、休漁期間が長いこと。
一か月まるまる休みになることもある。
じゃあ、その間は何しているかというと、当然無給なので、他所に働きに行くか、ぷらぷらして遊んでいるか。
漁に出れない、出ていない時は何をするか
浜の清掃、船&網のメンテナンス、組合の行事参加とかいろいろ
休漁期間、休漁日、風が悪い日と出漁している日の方が少ないくらい
それに追い打ちをかけるような往年の不漁
”そりゃ、獲れる時にとるわな”が、率直の感想である。
とれすぎても魚価が値崩れする可能性があるが、獲らない事には始まらない。
海のガードマンをしている方が稼げるかもとジョークが飛ぶ。
世間のニーズと魚種の旬がマッチするタイミングが一番いい。
消費地候補のメインは海外は中国、国内は東京、大阪の順で選別された。
地元が消費地の候補に上がらないのが悲しい。
大漁が期待できる日を選べたら、さぞかしいいだろうか。
自然現象と社会の板挟みで、思っていたほど仕事で漁をすることは自由度がないなあと思った。自分で船を持つとそうでもないのかもしれないが。船上ではどうしても人間関係が濃くなるし、不漁だとなおさらそっちの方向の話題が多くなる。
そんな中でも人間関係で楽しみを見出せたのが、Yさんとの出会いだった。