水産物卸のクラハシ(広島県福山市)は、食材として人気の高いシロギスの養殖に乗り出した。養殖技術を開発した福山大と協力し、量産に向けた実用化に成功した。採卵からふ化、育成までの完全養殖は世界で初めてという。沖縄県に整備した採卵施設などを拠点に「びんごの姫」のブランドで天然の魚が捕れない冬季に供給する。 【画像】クラハシが沖縄に整備した種苗研究センター 養殖は、温暖な沖縄県の伊平屋島で行う。クラハシは昨年4月、現地に種苗研究センターを整備。採卵して稚魚が育ったら、現地の漁協が所有する陸上養殖施設に移して育てる。水温や明るさを調整することで、従来は難しいとされてきた産卵のコントロールに成功したという。冬場の水温が高いため、通常より3割以上短い1年弱で出荷が可能となる15センチ前後に育つ。 シロギスは本州近海で漁獲される。臭みのない白身で刺し身や天ぷらとして人気が高い。産卵のために浅瀬に集まる3~10月の水揚げが多い一方、冬は極端に漁獲量が減り、高値で流通する。近年は漁獲量も少なくなり、市場での不足を補うため魚種の近い魚が輸入されている。 福山大は2015年、養殖の研究に着手。クラハシも18年から参画し、今年2月に完全養殖に成功した。飲食店での需要を想定し、今年10月の出荷開始を目指している。 養殖では、漁の際にできる傷がないという利点もある。同社は、将来的には生産を年50万匹に拡大させ、海外へも販路を広げたい考え。倉橋彩子専務は「一年を通じて安定供給できるようになり、天然の魚の回復にもつながる」と話している。
引用元:https://news.yahoo.co.jp/articles/7b8aaa7e8e6e34a5707c475038e075483e19595