有明海から約30キロ離れた福岡県八女市上陽町の森林を漁協が購入した。漁業者たちが海や川の上流にある森を育てることで、豊かな漁場を取り戻すきっかけにしたいという。 森林は矢部川の支流・星野川の両岸にある。「福岡有明海漁連」(柳川市)が約7・7ヘクタール、「矢部川漁協」(八女市)が約5ヘクタールをそれぞれ購入し、今後、植樹をする計画だ。 なぜ、漁業者が森林を買ってまで育てるのか。ノリの養殖者らでつくる福岡有明海漁連の西田晴征会長は「筑後川と矢部川水系から注ぐ水が豊かな有明海を育て、その恩恵を私たち漁業者が受けている」と語る。 森林に降った雨は、腐葉土などの栄養分を取り込み、ゆっくりと川や海へと流れ込む。その栄養分を植物性プランクトンや海藻が吸収し、魚はプランクトンを食べる。そのおかげで、矢部川ではアユやモクズガニ、ウナギなど、有明海では養殖ノリやアサリ、ガザミなどの漁が盛んだ。 ところが、西田さんは最近、川の水量や栄養分が減っているのではないかと感じているという。「森林を購入することで、漁業をなりわいとする私たちが森林を手入れして、川や海の環境を守るという意思をはっきり示したかった」と話す。 購入した森林は、スギやヒノキなどの針葉樹が大半だが、落ち葉が栄養豊かな腐葉土になる広葉樹を増やしていく計画だ。県八女森林組合にも協力してもらうという。 矢部川漁協の甲木康裕組合長は「小さな一歩だが、これをきっかけに、山川海の結びつきをたくさんの人に知ってもらい、川の流域環境を守る活動に賛同してほしい」と話す。
引用元:https://news.yahoo.co.jp/articles/ffd6d68c483a0651a31a7be8dde18f614437c126