最盛期を迎え、猫の手も借りたい佐賀県の有明ノリの漁師たちは、慢性的な担い手不足に悩まされてきました。そこで、北海道の昆布漁師の手を借りるべく“協議”が進んでいます。ノリの仕事があるのは「秋・冬・春」。一方、昆布は「夏」がピークです。お互いのオフシーズンに人材交流して、稼働率を上げようとしています。 【写真で見る】人手不足の解消へ オフシーズンに人材交流して、稼働率を上げる
季節ごとの仕事量に“偏り”ノリ漁師は夏場は仕事がない
季節ごとの仕事量に偏りがあるノリの生産
漁師によって次々と水揚げされる黒い液体。その正体は「ノリ」です。有明海のノリ漁は今、最盛期を迎えています。 ノリ漁師・内田勝正さん「船にノリを移して、工場に送るんですよ。(出来栄えは?)今日の漁場のは黒いんですけど、沖は黄色くてだめです」 国内で生産されるノリのおよそ4割を占める有明ノリ。中でも佐賀県は記録的な不作だった去年で途切れるまで、生産量・販売額ともに19年連続で日本一でした。国内最大の産地である佐賀県ですが、現在、大きな課題を抱えています。収穫したノリを乾燥させて成形するノリの加工場を訪ねました。最盛期の今、猫の手も借りたいほどの忙しさですが、人手が足りないといいます。 ノリ漁師・藤川直樹さん「ノリは短期で夏の仕事はないので、年間雇用が難しい。人を1年間つなげておくのが難しい」 人手不足の原因の1つが、季節ごとの仕事量に偏りがあることです。ノリの生産は、10月ごろに養殖が始まり、1月末から3月にかけて漁の最盛期を迎え、春には漁が終わります。夏場は仕事がないため、担い手は「季節労働者」として雇用せざるを得ず、確保が難しくなっているのです。 ノリ漁師・藤川さん「佐賀ノリは日本全国の市場を担ってるので、(産業が)細っていくのが…」
夏以外は仕事のない昆布漁師が応援にかけつける?
佐賀県によりますと、県内のノリ養殖の事業者数はピーク時の3分の1まで減少。県内で最も多く事業者がいる佐賀市川副町の漁協でも、廃業や漁の協同化によって事業者数は年々減少。1997年に218事業者だったのが、2022年には127事業者になり、この25年間で4割も減少しました。後継者不足の問題も重なり、担い手不足が止まらない養殖ノリ漁。解決の手はあるのでしょうか。 先月29日。川副町の漁協を訪れたのは、約1600キロ離れた北海道・利尻富士町の漁師たちです。全国的に有名な「利尻昆布」で知られる利尻富士町。昆布漁のシーズンである夏以外は仕事がなく、有明ノリと同じような理由で担い手不足に悩まされています。そこで漁期が真逆の2つ街の漁師が、お互いの繁忙期に行き来することで、人手不足解消につながらないかと視察に訪れたのです。利尻の漁師たちはノリの生産施設などを真剣なまなざしで見学、様々な質問をぶつけていきます。 「くみ上げた水をろ過して使っている?」 「海水を汲みに行っています。河川なので、塩分濃度が低いんですよね。沖まで海水を組いいって使っています」 「女性がやっているのは何の作業ですか?」 「水の水位が均一になるように」 利尻漁師「すべて機械化されていて、たいしたもんですね。きれいなノリで素晴らしいです」
北と南の“強力タッグ”実現に向けて協議
人手不足の影響で「利尻昆布」の生産量は減少しているといいます。同じ課題を抱える漁師同士、「助け合いたい」と話します。 「忙しくない時期にこちらでやれることがあるかなと今、見ています。北と南で離れていますが、お互い同じ漁師ですから、助け合えることがあれば」 佐賀県有明海漁業協同組合南川副支所・馬場支所長「(ノリも昆布も)周年操業じゃないので、人材のやりとりが可能であれば担い手の課題は、急激に生産者が減少しているところをなだらかにするくらいはできるかなと」 食卓に欠かせないノリと昆布。担い手不足という共通の課題を前に、北と南の強力タッグ実現に向けて、今後も協議を重ねていく予定です。